イボ

イボ

1. イボ(尋常性疣贅)とは

尋常性疣贅は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって生じる皮膚の病変で、最も一般的なタイプの「ウイルス性いぼ」です。

  • ウイルスの型:HPVの2型、4型、27型、57型など
  • 主な感染経路:接触感染(皮膚と皮膚の摩擦など)。皮膚に小さな傷があると、そこからウイルスが侵入して感染する。
  • 潜伏期間:数週間~数ヶ月

2. 症状や見た目の特徴

  • 小さくて硬い、皮膚色〜灰白色の盛り上がった病変。
  • 表面はざらざらして角質が厚くなっている。
  • 通常痛みはないが、足の裏にできたもの(足底疣贅)は圧痛を伴うことがある。鶏眼や胼胝との鑑別が必要なこともある。
  • 周囲に衛星病変(いくつもできる)が生じることもある。

3. 診断

多くは視診で診断可能です。ダーモスコピーで黒点(血管の塞栓)を確認することもあります。
難治性や他疾患との鑑別が必要な場合は、皮膚生検を行うこともあります。

4. 治療法

保存的治療

液体窒素による凍結療法が最も一般的で当院も多く行っております。必要に応じて角質を削ってから処置します。

《冷凍凝固療法とは》
液体窒素(-196℃)を用いてイボ組織を急速に凍結・壊死させる治療法です。凍結と解凍を繰り返すことで、ウイルス感染した皮膚細胞を破壊し、健康な組織の再生を促します。直接ウイルスを殺すのではなく、壊死組織の排出と免疫活性化を利用する治療です。

治療の流れ

-196℃の液体窒素を、綿棒の先端に含ませ、イボに数秒~10秒程度押し当てる。 1回の治療時間は、凍結(5~15秒)で必要に応じて1~3回凍結・解凍サイクルを行います。

治療の回数

1~2週間ごとに繰り返し行い、通常は3~6回程度で消失することが多いですが、長くかかることもあります(10回以上かかる場合も)。

冷凍凝固療法の副作用・注意点

外用薬ではサリチル酸外用薬を処方することもあります。
内服薬では、ヨクイニン(薏苡仁)が補助的に処方されます。ヨクイニンはハトムギの種子由来の漢方薬(生薬)で、皮膚の代謝を整え、免疫を高める作用があるとされています。比較的副作用が少なく、小児や長期使用にも使いやすいお薬です。

その他の治療

電気焼灼(電気メス)や、レーザー治療、手術的切除が挙げられますが、多くは自費診療となることや再発率や瘢痕の問題があるため積極的にはすすめません。適応があり、ご本人の希望が強く、デメリットを受け入れられる場合に処置します。

5. 自然治癒することはあるのか?

子どもでは数ヶ月〜2年以内に自然治癒することもあります。ただし、他人にうつす可能性があるため、治療が推奨されます。

《自然治癒を待つ際のポイント》

  • むやみにいじらない(削らない・潰さない):悪化・拡散リスクあり
  • 他人にうつさないよう注意:特にタオル・スリッパの共用を避ける
  • 毎日観察する:変化があれば写真で記録しておくと医師に相談しやすい

6. 皮膚科受診をすすめるケース

状況対応の目安
長期間(2年以上)消えない治療を検討
数が増えてきた/広がっている感染拡大防止のため早めの治療
痛み・出血がある他疾患との鑑別含め診察が必要
爪のまわり・顔など目立つ部位瘢痕や色素沈着を避けるため治療検討
免疫力が低下している場合(例:糖尿病、免疫抑制剤使用中など)自然治癒は難しく、積極的な治療が望ましい

気になるイボがあれば、早めの医療機関受診をおすすめします。お気軽にご来院下さい。